[umunowaうむのわ]は、令和元年に歩み始めた「しなの花」や「しなの繊維」を素材にしたプロダクトをデザイン・製作・販売している地域ブランドです。
今まではモノづくりを中心に活動してきましたが、今年(令和7年)から新たな取り組みを始めました。
それは、高品質なしなの木の皮の確保と、持続可能なしなの花(オオバボダイジュ)の採取を目指した、新しい「しなの森」の保全事業です。

これまで関川集落では、しなの木から繊維を得るために伐倒し、それから花を採取してきました。
しかし、必ずしも伐倒した木に花が付いているとは限りません。
しなの花はとても気まぐれで、花が咲く木もあれば咲かない木があり、年によっては花をつけない年もあります。

加えて、開花期間はわずか8日ほど。中でも製品に使える質のよい花を採取するには、満開になる直前を見極める必要があり、そのタイミングを逃さないために多くの準備と時間が必要です。
これまで、採取計画がうまく運ばず苦労することが多々ありました。

そんな中、作業の合間にふと森の木々を見ていると、しなの木も人間と同じように個性があることに気づきました。
真っ直ぐな木もあれば、大きく曲がってしまった木や二股に分かれている木がある。どの木も、人間と同じように、愛嬌と個性に満ちています。
その姿を見て、「この木たちの個性を、そのまま受け入れる森づくりがあってもいいんじゃないか!」と閃いたんです。

私たちは決して、花を摘むために木を倒してはなりません。
しなの木から繊維を紡ぐ文化があってこその、しなの花。
花はその二次的な恵みであり、あくまでも“おすそわけ”のような存在です。
だからこそ私たちは皮剥ぎに適さない木を活用させていただき、新たな価値を生み出していくことを考えます。

さっそく、地元の組合に相談することに。
伝統ある営みに新しい提案を持ち込むことに不安もありましたが、それはまったくの杞憂でした。

いただいたのは「実験的にやってみよう!」という力強い組合長のお言葉。何百年と続くしな文化の歴史で初の試みを、快く受け入れてくださったんです。

2025年2月、私たちは組合長とともに、150cmほど積もった「染み雪」の上を歩き、しなの森へ向かいました。


氷点下を下回る雪国では、気候条件が合えば前日までに降り積もった雪の上を歩くことができ、まるで雲の上を歩いている気分です。

野ウサギの足跡もありました。

この日の目的は、しなの木の剪定です。林業家の方の助言をもとに、雪が降る前に目星をつけておいた木の幹や枝を慎重かつ丁寧に切り落とします。

そうすることで枝は横へと広がり、何年か手入れを続けていけば、伐倒せずにハシゴをかけて花を採取できるようになるという計画です。

また、同時に「枝打ち」も行いました。
そうすることで、まっすぐ伸びるしなの木には節ができず、より長く皮をはぐことができます。これにより、糸にするときに績む回数が減り効率的で品質も向上します。

近年、ライフスタイルの変化により、中山間地域でも「山に入る人」や「山に入る回数」が減ってきています。
今回の私たちの取り組みは、森に新たな価値を見出すことで、確実に森との関わりを深める一歩になるはずです。

今後はこの新たなしなの森で、皮剥ぎや花摘みなどのイベントを開くことで、木と人、人と人との新しい交流の場を育てていきたいと考えています。

以前、近隣の鶴岡市小国集落で森の活用事業を実施した時に、山形大学の准教授 菊池先生はこう語ってくださいました。

「これからの森は、交流の場にすると別の道が拓かれる」と。

その言葉を胸に、私たちは関川の“しなの森”を舞台に、地元の方々と力を合わせながら挑戦していきます。